VIXが上昇すると株価は下がる?相関関係を徹底解説

はじめに

「VIX指数(恐怖指数)が上がると株価は下がる」とよく言われます。ニュースでも「今日の株式市場は下落、恐怖指数が急上昇しています」といった解説を耳にすることがあります。果たして本当にVIXが上昇すると株価は下落するのでしょうか。本記事では、VIXと株価の関係性についてデータやメカニズムを交えながら徹底解説します。相場分析において重要なこの逆相関の理由と限界を理解し、投資判断に役立てていきましょう。

VIXと株価は逆相関の関係

結論から言えば、VIXと株価(特に米国株式指数)は強い逆相関の関係にあります。逆相関とは、一方が上がると他方が下がる関係のことです。実際、VIX指数が大きく上昇する局面では、S&P500やダウ平均など株式市場が急落している場合がほとんどです。歴史的に見ても、2008年のリーマンショックや2020年のコロナ・ショックなど、大暴落の局面ではVIXが急騰し、株価指数が急落する動きがはっきりと確認できます。

日々の値動きにおいても、この傾向は顕著です。統計的な分析では、VIXとS&P500の一日の変化率には強い負の相関があり、概ね**-0.7前後**という高い負の相関係数が報告されています(-1が完全な逆相関)。これは、たとえばS&P500が大きく下落した日に、VIXが上昇している確率が非常に高いことを意味します。投資家の間でも「株が急落するときには決まってVIXが跳ね上がる」という認識が広く共有されているのは、この経験的事実に基づいているのです。

なぜVIXが上がると株価は下がるのか

では、なぜこのようにVIXと株価は反対方向に動くのでしょうか。主な理由は投資家心理とリスクヘッジ行動にあります。株価が大きく下がり始める局面では、投資家はさらなる下落に備えてリスクヘッジを行おうとします。その代表例が、株価指数のプットオプション(売る権利)を購入する動きです。プットオプションは市場の下落に対する保険のようなもので、需要が高まれば価格(プレミアム)が上がります。VIX指数はこれらオプション価格から計算されているため、プットオプション買いが殺到するような状況ではVIXが急騰します。すなわち、株価急落 → 投資家が保険を求める → オプション価格上昇 → VIX上昇という連鎖が起きるのです。

また、価格変動の特性として「株価は上げよりも下げの方が急激になりやすい」という点も挙げられます。株価がゆっくりと上昇している局面では市場のボラティリティ(変動率)はあまり上がりませんが、暴落時にはごく短期間で何%も急落することがあり、変動率が跳ね上がります。したがって、下落局面の方が上昇局面よりもVIXを押し上げやすい構造になっているとも言えます。投資家心理と相まって、恐怖(Fear)の感情が市場に蔓延するとVIXは急上昇し、その状況下では株価は大きく値下がりしていることが多いのです。

常に逆相関とは限らない?例外のケース

VIXと株価は強い逆相関関係にありますが、常に完全に逆相関が成り立つわけではありません。市場の状況によってはいくつかの例外的な動きも見られます。

一つは、株価が比較的安定した推移をしているのにVIXがじわじわと上昇するケースです。例えば、大きな経済イベントや選挙などを控えて市場参加者が警戒を強めている場合、株価自体はまだ下がっていなくても、将来の不確実性への備えからオプションが買われてVIXだけ先行して上がることがあります。このように**「予防的なVIX上昇」**が起きるときは、後になってから株価が変動する可能性が高く、早めにヘッジの動きが出ていると言えるでしょう。

また、株価とVIXが同時に上昇する現象も稀に起こります。典型的なのは、急落後の相場反発局面です。大きく下げた後に株価が反発し始めるとき、依然として市場のボラティリティは高いままのことがあります。そのため反発初期の局面では、株価指数が上昇しているにもかかわらずVIXが平常時より高めで推移し、場合によっては上昇を続けることがあります。これは、**「市場が不安定だが株価が戻している」**という過渡期に見られる現象です。

さらに、緩やかな下落相場ではVIXがそれほど上がらない場合もあります。じりじりとした下げが長期間続くとき、投資家が徐々に下げに慣れてしまい、急落局面ほどには恐怖感が高まらないためです。このように、逆相関とはいえ細かな局面では色々なパターンが存在することを覚えておきましょう。

VIXと株価の関係を投資に活かすポイント

VIXと株価の逆相関を知ることは、投資戦略においてさまざまな示唆を与えてくれます。以下に、その関係性を投資判断に活かすいくつかのポイントを紹介します。

  • 過度の楽観・悲観の判断: VIXが極端に低いとき(例: 10以下)は市場が楽観に傾きすぎている可能性があり、株価が一見順調でも注意が必要です。一方、VIXが極端に高いとき(例: 40以上)は悲観がピークに達しているかもしれず、優良株を安値で拾う好機と考える投資家もいます。
  • 調整局面の察知: 株価上昇トレンドが続いている中でVIXが上昇基調に転じた場合、相場の調整(下落)が近い可能性があります。VIXの先行的な上昇は、マーケット内部でヘッジが進んでいるサインとも取れるためです。
  • ヘッジ戦略: 株式ポートフォリオを保有している場合、万一の急落に備えてVIX先物やオプションを使ってヘッジする手法があります。これは上級者向けですが、VIXと株価の逆相関を利用したリスク管理の例です。株価が急落すればヘッジとして保有したVIX関連ポジションが値上がりし、損失の一部をカバーしてくれます。

以上のように、VIXと株価の関係を理解すると、市場の過熱感や警戒感を読む手掛かりが得られます。ただし、前述の通り例外的な動きもあるため、VIXだけで全てを判断するのは禁物です。あくまで他の指標や経済ニュースと合わせて総合的に分析することが重要です。

まとめ

VIX指数と株価は概ね逆相関の関係にあり、特に市場が大きく動く局面ではその傾向が顕著です。VIXが上昇しているとき、多くの場合は市場に何らかのストレスがかかっており、株価が下落基調にあります。しかし、常に例外なく当てはまる法則ではない点にも注意が必要です。VIXが発するシグナルを鵜呑みにするのではなく、市場全体の状況を踏まえて解釈するようにしましょう。

VIXと株価の関係を正しく理解すれば、日々の相場状況を立体的に捉えることができます。ぜひ今後の投資判断に役立ててみてください。

なお、VIXそのものの基礎知識や活用法について知りたい場合は、『【保存版】恐怖指数VIX完全ガイド【初心者~上級者対応】』も参考にしてみてください。VIXの概要から応用まで幅広く解説しています。

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